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Goodfellas House Choose One!

ちょっとしたサウンドトラックとその作品についてのコラムです...

Exorcist, The
監督 ジョージ・ロイ・ヒル
出演   ポール・ニューマン
ロバート・レッドフォード
キャサリン・ロス
音楽   バート・バカラック
  B・J・トーマス

 セピア色に褪せた歴史の1ページに刻まれた二人のアウトロー・ガンマンの物語―

 

 1890年代の西部。
 牧場経営と銀行泥棒を生業とする二人組のアウトロー・ガンマン、ブッチ・キャシディサンダンス・キッド
 街へ銀行の下見に行くが、警備がものものしくて色気のかけらもなくなっちまった。
 代わりにいつもの如くの列車強盗をやったがアガリは今ひとつ。
 「行きだけじゃなくて帰りも狙ったら?」ともう一度列車強盗をやらかしたが、ダイナマイトの量を間違え金庫は木っ端微塵!
 中の札束は全て吹っ飛び風に舞い散り、さらに以前大金を強奪された大会社が雇った凄腕のガンマン達がブッチとサンダンスを追い始めた!

 
 

 

 そこから丸二日間、追っ手から逃げ回り、何とか逃げ切った二人だったが、サンダンスの恋人・エッダの家に辿り着いた頃にはもうヘトヘトだった。
 「もう俺達も若くねえ。だからって今更堅気にもなれねえ。けどあの凄腕のガンマン達が俺達を殺しに来る。もうアメリカには居れねえや!」
 と二人はエッダを連れて南米のボリビアへと旅立った。

 「ボリビアはパラダイスだぜ!」とのたまったブッチ。
 だが実際のボリビアは荒れ果てたド田舎だった。
 そこで二人は元の銀行強盗へとカンバック。
 やがて二人は「ヤンキーの泥棒」として南米中に指名手配される程の有名な存在となってしまった!

 
 

 エッダは二人に牧場経営を勧めるが、もう堅気にはなれないのは二人がいちばん良く知っていた。
 「二人の死ぬ姿だけは見たくない」というエッダは、二人を残してアメリカに帰ってしまう。
 ブッチとサンダンスは山賊としてバッド・ウェイに逆戻り
 「もう明日なんか知るか!今日だけが全てだぜ!」と叫ぶ二人だが、もう先が見えていた。

 ある日、寂れた村で飯を食っていると二人はたちまち警察隊に囲まれてしまう。
 必死に応戦する二人だが、逃げ込んだボロ小屋で袋のネズミとなってしまう。
 そこに軍隊の増援部隊までもがやって来た。
 次第に激しさを増す銃撃戦のなか、二人は撃たれて重傷を負う。
 もう逃げ切れない―。

 
 

 「なあ、おい、今度はオーストラリアに行こうや。
 とブッチ。
 「…そこは女と銀行はたんまりなんだろうな?」
 とサンダンス。

 意を決して威勢よく表に飛び出したブッチとサンダンスに、軍隊の容赦のない一斉射撃が浴びせられた。

 

 そしてブッチとサンダンスは歴史の1ページに刻まれ、伝説となったのだ―。

 

 1969年、ウエスタン映画の『明日に向って撃て』は誕生した。
 当時、ウエスタンの音楽はエルマー・バーンスタインディミトリ・ティオムキン辺りが定番だった。
 

 

 しかし本作品自体がウエスタンとしては異色の作品であると同時に、音楽もこれまた異例の、ウエスタンのスコアなんて書いた事もないバート・バカラックが担当することとなった。
 当時、バカラックはポピュラー・ミュージックの作曲家・アレンジャー・指揮者であり、ポップス界の優れたヒット・メイカー、ソング・ライターでもあった人気者。
 ディオンヌ・ワーウィックを発見して育てたのもバカラック。
 勿論、彼女の大ヒット曲も書いたのも彼だ。

 

 映画のスコアは『何かいいことないか子猫チャン』('65)が話題になった後、『紳士泥棒 大ゴールデン作戦』('66)、『007 カジノ・ロワイヤル』('67)に続いて『明日に向って撃て』を担当し、1969年度のアカデミー賞でオリジナル・スコアと主題歌で2つのオスカーを受賞。
  この時、世界的にバカラック・ブームを巻き起こした。
  その後も数々のヒット曲を量産し続け、精力的なアルバムのリリース、さらにはミュージカルも手がけつつ、来日コンサートも実現。
 もう1970年代には「バカラックのレコードは一家に1枚!彼の曲は誰でも知ってる」といっても過言ではない存在となっていた。
 しかし彼は映画界から数々のオファーを受けても映画のスコアは量産せず、厳選して担当。
 その為かだんだんと映画界から疎遠となっていってしまう。

 

 

 

  1979年、とあるイタリア映画のアメリカ公開版用に「スコア入れ替え」の仕事を担当。
 「あのバカラックがこんな仕事を…」と熱心なマニアのハートにボリビア軍の銃弾を撃ち込んだのがジャクリーン・ビセット主演の『抱いて…』だった。
 お昼の東海テレビ製作メロ・ドラマ以下の「あ゛ー!観てしまった自分が恨めしい!」と思わせてしまうこの作品、イタリア・オリジナル版の音楽はゴブリンが担当していた。
 しかしバカラックは、ジャッキー・デシャノンマイケル・マクドナルドらをフィーチュアしてオリジナルより豪華なAOR(死語)に仕上げ、見事に映画本編を上回るクオリティの音楽を提供してみせたのだ。
 そして『ミスター・アーサー』('81)の大ヒットでかつての映画界への栄光を取り戻した。
その後も佳作『ラブINニューヨーク』('82)などを担当。
そこから一旦時代がバカラックから遠ざかるが、1990年代の中頃から再評価時代に突入。
60sカルチャー大リスペクトの『オースティン・パワーズ』('97)にも登場して、バカラックはフォーエヴァーな存在となったのだ。

 

 もし、『明日に向って撃て』のスコアが、当時の平均的なウエスタンの威勢のいいスコアだったら、とふと考えてみる。
 …思わずゾッとする。
 正統派のウエスタン・マニアからは、「あれは西部劇の音楽なんかじゃない!」と陰口をたたかれたかもしれないが、監督のジョージ・ロイ・ヒルのアプローチも間違いではなかった。
 雨が降ってない晴天なのにB.J.トーマスの歌う『雨にぬれても』が流れても決しておかしくはない。

 それはこの作品の公開後の歴史が如実に証明しているのだ。

 何十年と時を重ねても決して色褪せない伝説がここにある。

 1969年にバート・バカラックの専属レーベルA&Mよりリリースされたこのサウンドトラック・アルバム。
 全9曲収録だが、今のヴォリュームからすると収録時間はとても短く、はかない。
 まるでブッチとサンダンスの最期のようだ。

 

 本作品では短いメインタイトル&エンド・タイトルに『捨てた家』の短いメロディが使われている他、劇中は何と4シーンにしか音楽は流れない。
 まず1曲目は『雨にぬれても』がブッチとエッダの自転車のシーンに流れ、2曲目がニューヨークの場面の『オールド・ファン・シティー』
 そしてボリビアの強盗シークェンスのスキャットの名曲『サウス・アメリカン・ゲッタウェイ』
 4曲目がエッダの最期の場面の『太陽をつかもう』
 劇中、たったこれだけ。
 2010年現在の、全編スコア流しっぱなしの作品とは大違いだ。

 

 ウエスタンのスコア、いや、音楽演出としても、決して音楽が高らかに鳴らない。響かない。
 監督のジョージ・ロイ・ヒルは、最期の銃撃アクション・シーンにも、一切スコアを付けなかった。
 従来、ウエスタンならばクライマックスの銃撃シーンには高らかに音楽が鳴るのが常套なのに、である。
 これがマカロニ・ウエスタンならいかにもの大げさな曲が、いやでも鳴り響くだろう!

 
 

 A&Mのこのアルバム、当時、A&Mならではのレコーディング・システムのHAECO−CSGシステムでレコーディングされ、このシステムは「A&Mならではの音」としての高音質を誇った。

 このアルバムは、正確に言うとバカラックがこのアルバムの為に再レコーディングを行った曲を中心に構成されており、ただの映画のスーヴェニール的なアルバムとは一味違う。
 立派にバカラックのソロ・アルバムとして通用し、その後も映画を離れて上質のムード・ミュージック・アルバムとして、語り、愛され続けていくだろう。


 

 リアル・タイムではアルバムはA&M、『雨にぬれても』の歌はSEPTERからリリース。
 アルバムは世界中でリリースされ、日米では立派に1980年代の後半までレギュラー・アルバムとしてスーパー・ベストセラーを続けており、CD化も速かった。

 
 
 また、『雨にぬれても』は、大量のカヴァー・ヴァージョンを生んだ。
 バカラックはこの1曲の印税だけで今でも笑いが止まらないほどだろう。
 カヴァーは、パーシー・フェイスのヴァージョン(まるでヘンリー・マンシーニのような優しい女声コーラスで歌われる)がベストだろうか。
 コレクターズ・アイテムとしては、CBS SONYがリリースした『バカラック集』のアルバムだろう。
 理由はジャケットが『明日に向って撃て』のあの3人だから!
 

 …珍しく空の色がセピア色に染まったある日の出来事なんですけどね。
 来たんですよ、突然。
 誰がですって?
 あの人達ですよ。
 あの爺さんの二人組ですよ。
 一人は銀髪、もう一人は金髪なんですけどね。
 二人ともヨボヨボの爺さんでね。
 杖を持ちながら何故か、ウチに来たのですよ。
 そして何か訳の分からないことも言ってるし。
 そう、「ブレンディを飲ませろ!」とか「ワシんとこのスパゲッティ・ソースはマズいぞ!」とか「ワシは泳げないんや!」とか「スッポンポンになるんや!先生!」とか、ホントに困りました。

 
 
 けれど二人とも「おめえに騙された!ボリビアなんか!」口喧嘩してる割には、仲がよくていいコンビなんですよ。
 そこで「おじいさま方、何処か行きたい所があるんですか?」と聞いたところ、二人して
 「えええと。何処だっけ…?そう、ブティック・キャサリン・ロスに行きたいんじゃ!」
 と言うんですよ(注:1970年代のOSAKAにはブティック・キャサリン・ロスは実在した)

 

 …で、そこに行く前に披露したいと。
 分かりました!

 死んだと世間は思っていてもここにどっこい生きているご老体の二人!(失礼!)
 若きあの青春時代を思って、あの明日なき時代に銃弾を撃ち込んで、天気はピーカン、でも貴方達はずぶ濡れ!
 さあ、我が昭和ミュージック・ホールで歌ってください!
 『雨にぬれても』です!!

 

 …ええ、レレ、イン…ドド…
 「ええい!めんどうだ!オマエが歌え!」(by 羽佐間道夫)

 

『雨にぬれても』

 頭に雨が降りかかる
 足のはみ出るベッドの様に世間は住みにくい
 ひっきりなしに落ちる雨粒

 だから太陽に言ってやった
 仕事をさぼる奴は嫌いだと
 雨は止みそうにないないけど

 でも俺は平気さ
 これ位じゃへこたれない
 幸せは目の前に来ているんだ

 頭に雨が降りかかる
 でも俺は泣かない
 涙は似合わない
 雨を恨んだりしない
 何が起ころうと平気さ