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Goodfellas House Choose One!

ちょっとしたサウンドトラックとその作品についてのコラムです...

ファンダンゴ

Fandango (1985)
監督ケヴィン・レイノルズ、主演ケヴィン・コスナーとその他4人衆。

「誰にでも平等に青春を過ごす権利と時間はある。」

1971年、大学を卒業してゆくルームメイト5人組「ザ・グルーバーズ」が、卒業後直面しなければならない現実(仕事、結婚、そしてベトナム徴兵)から、最後に一度だけ現実を忘れて最後の「バカ騒ぎ(ファンダンゴ)」に繰り出す、ちょっとビターなロード・ム−ビー。数々の70年代ロックとビールをお供に…

現実を忘れて数日の旅を過ごしても、将来の不安とベトナム徴兵の現実、そして青春への決別に踏みとどまる5人。でも旅の終わりはグループ結成時メキシコ国境に埋めた「ドン・ペリニョン(DOM)」に会いにいこうと決めた―

卒業式のパーティに流れる、エリック・クラプトン率いるクリームの「バッジ」に始まり、メイン・タイトルにはエルトン・ジョンの「土曜の夜は僕のもの」、CLASSICS IVの「スプーキー」、ステッペンウルフの「ワイルドで行こう」が見事にこのロード・ムービーのサウンドトラックとしてフィットして、そしてメキシコ国境の夕焼けの空に流れるパット・メセニー&ライル・メイズの「9月15日(ビル・エヴァンスに捧ぐ)」と「イッツ・フォー・ユー」には耳を奪われる。

1986年の春に日本公開された本作は、今では遠い青春の思い出の彼方に行ってしまったと思われがちだが、決してそうではない。
誰しも過ごす青春とその思い出。

「私の青春は暗かった、なんもありませんでした!」
「青春は『三無・主義(無関心・無責任・無感動)』で過ごしました。」

と、ダークに語る方たちも居るかもしれない。
でもそれは青春の捉え方が違うだけかもしれないし、
「絶対、探せば青春の大切なメモリーは見つかる!」
と、本作鑑賞後はそう思えてくる!

例えば…

初めてのデートで前夜から計画を立てるも、見事に緊張で当日崩壊し
「だっ、大根の取り入れがあるから!」
と立ち去ったり…
初めてのナンパで緊張のあまり
「あ、あの、一緒にお、お茶、茶を摘みにいきませうか?」
と口走ったり…
工事現場のバイトの親方に
「おい、モンキー(スパナの事)、持ってこい!」
と言われてとっさに
「え!おサルをですか?」
とボケたり…
すんごい美人のおねえさんに
「ちょっとそこのカレ、アンケートいい?」
と案内された部屋でやたら花畑や説法のビデオを長時間見せられたり…
付き合ってる彼女が就職で上京すると聞いたとたん、焦って
「じゃあ結婚しよう!ブラジルへ行ってコーヒー農園をやろう!」
と支離滅裂なことを言ったり…

…こんな出来事も青春さ。ファンダンゴなのさ。

本作のサウンドトラックは世界でなんと日本のみ、4曲入りミニLP(エンド・タイトルに流れるブラインド・フェイスの「マイ・ウェイ・ホーム」含む)、エルトン・ジョンのシングル、主人公が昔の彼女を思い出すシーンに流れたキャロル・キングの「イッツ・トゥ・レイト」(ハリウッド版「イルマーレ」でも効果的に使用)のシングル、と計3種リリースされていた。
「9月15日」「イッツ・フォー・ユー」はパット・メセニー&ライル・メイズのアルバム「ウィチタ・フォールズ」に収録されている。
映画のラスト、5人は別々に去っていく。恋に、青春に、友情に決別して、ドン・ペリニョンを皆で飲み干して…。この「ファンダンゴ」は心が疲れた時、そっと取り出して観たくなる。まるで「卒業アルバム」のように、観たくなる、聞きたくなる…