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Goodfellas House Choose One!

ちょっとしたサウンドトラックとその作品についてのコラムです...

Merry Christmas Mr.Lawrence

主演 ジェニファー・コネリー
監督 ダリオ・アルジェント
音楽
ゴブリン、クラウディオ・シモネッティ、
ビル・ワイマン、サイモン・ボズウェル 他

 さらさらの黒く、胸まで伸びた美しい髪に思わず触れたくなる。

「あたりまえでしょ。テモテーでシャンプーしてるんだから。念入りにチャン・リン・シャンもね。」

  そしてアルマーニの純白のちょっぴりアダルトなファッションに包まれた、しなやかな肢体。

「それが普通でしょ。パパが買ってくれるの。」

 彼女をひと目見るだけで全身に電流が走る…

 ワタシ、ジェニファー、14才。パパは世界的な映画スター。ニューヨークの豪邸に住んでるの。もちろん令嬢よ!親しい友達は、ワタシのことを「ジェニ」と呼ぶの。誰?「デッセ・ジェニ」と呼ぶのは!あんな箱ディスコと一緒にしないでよ。でもワタシの本名は、「白鳥麗子」というの。秘密だけどね。オホホホ!ねえ、漢字で「かれい」って書ける?書けるわけないよね?凡人にはね!アハハ!じゃあ「ばら」も漢字で書ける?書けないでやんの!ワタシ?もちろん!書けないわよ。だって「異人」さんだもの。オホホホ!!

 どうでもいいけど、最近オチチが凄い成長して肩こりが酷いの。体育の時間なんて最悪。先生が「こら!ジェニファー!メロンを隠すな!」って怒鳴るの。毎晩、ベットの中でベビースターラーメンと太田牧場のコーヒー牛乳を飲み食いしてたらオチチが成長したの。友達には言えないけど。

 

 ところで…パパが映画の撮影でしばらくフィリピンに行くもんだから、ワタシはスイスのチューリッヒにある寄宿女子学校に転入しなきゃいけないのよ。世界中の令嬢しか入学出来ない学校なんだけどね。どうせ規則が厳しいのが最悪よ。

 女教師のブルックナーに連れられてワタシは学校に着いた。校名は「リヒャルト・ワグナー音楽学校」。フーン、いいじゃない!ワグナーと言えばやっぱり「ワルキューレ!うおおお!カーツ!キルゴア!ウィラード!コッポラ!アポカリプス・ナウ!!チャーリーはサーフィンをやらないわよ!!」…なんてシャウトしてると陰気なブルックナーが白い目で見たけど、まあいいわ。

 

 でも最近この付近では連続美少女殺人が起きてるらしいの。コワイわね。美少女しか狙わないのよ。ワタシも危ないわね!と思ってたら今日も一人の美少女が謎の犯人に殺されたの!おなかに鉄の槍がグサリ、頭はガラスでバサリ、そして首チョンパ!ひええええ!

 そんな事件は他人事と思いつつも、ワタシは学校生活に馴染めなかったの。だってランチはビュッフェみたいなとこでフランスパンにサラダにカフェ・オレですって?ワタシのランチは、ヤキソバパンにメロンパンとリボン・シトロンなの!!ああ、ニューヨークに帰りたい…。そんなストレスからワタシは持病の無遊病が発生したの。真夜中、フラフラと外に出ると、目の前で女の子が、ぶっ殺されたような、そうでないような…

 
 

 倒れたワタシを助けてくれたのは、チンパンジーのインゲだった。インゲは昆虫学のマクレガー博士の助手で、博士は警察の依頼で連続少女殺人事件の捜査をやっていた。何でも遺体に付着していた虫の幼虫が手がかりになるらしいのよ。それならまかせて!実はワタシ、虫さんとお話が出来るエスパー少女なの!カワイイだけじゃないのよ!ワタシはこの時から、美少女探偵さんとして虫さんの手引きで捜査を開始。ボケっとしてたらルームメイトと博士がブチ殺されちゃったけど捜査続行!そして怪しい家を発見。でもそこは教師のブルックナーの家。この女、何か怪しいと思ってたらいきなり監禁されちゃった!

 …どえりゃーことになってまった…

 

 隙を見てパパの秘書モリスに助けの電話をした直後、この女が遂に正体を現した!!とっさに逃げた部屋にはえーん、えーん、コワイよう、と泣く幼稚園児くらいの男の子がいた。この子も監禁されてるの?と男の子が振り返るとその顔は!ひええええ!何、この子!スイスの座敷わらし?ちょっ、ちょっと、槍を持って追いかけてこないでよ!!!

 そう、この事件はこの座敷わらしが自分よりも美しい女の子を惨殺し、母親のブルックナーが隠蔽工作をしてたの!何てワタシは頭がいいの!ボートで逃げる途中、虫さんたちがワタシを助けてくれて座敷わらしは死んだ。岸に着くとようやくモリスがやってきた!遅ぇよ!しかし次の瞬間、着いたばっかのモリスの首がチョンパ!ひえええ!驚く間もなくブルックナーが鉄板を抱えて「よくも私の息子を!」と襲いかかってきた!と思ったら今度はチンパンのインゲが「ウキキキ!!(訳:博士の仇!)」と叫びながら逆襲!遂にブルックナーを倒したの!

 まあ、インゲ!ワタシのヒーローね!と優しくインゲを抱きしめたとたん…

 「ちょっ、ちょっとインゲ!オチチを揉まないで!

 ジェニファー、君の為にテープを作ったよ!って男の子がくれたんだけど聞いてみたらへヴィー・メタルばっかり!オエエ!ワタシはへヴィー・メタルはキライなのよ。ワタシは、 ビリー・ホリディ、ファッツ・ワラーが好き。そしてノーランズ、シーナ・イーストンも。でも実はゴブリンも好きって言ったら回りから変な目で見られたのは何故かしら?

 「フェノミナ」のサウンドトラックはね、ダリオ・アルジェントの音楽に対する美学が頂点に達したと思うの。ダリオはエンニオ・モリコーネやゴブリンとのコラボレーションが有名だけどこの「フェノミナ」では様々なミュージシャンが画面を彩る、まるで「ロック・オペラ」のようなサウンドトラックにしたのが見事だわ。

 

 ダリオが愛するイタリアのサウンドトラック御用達バンドのゴブリンが4曲を担当。ゴブリン、といっても本作ではファビオ・ピ二ャテリが「一人ゴブリン」としてだけどね。テーマ曲を担当した同じくゴブリン・オリジナルメンバーのクラウディオ・シモネッティと共に3曲を共同で作曲。ファビオがソロで書いたワタシのテーマ曲「Jennifer」は名曲よ。

 そしてメインタイトルの他、劇中何度か流れるもうひとつのテーマを担当したのは、ローリング・ストーンズのベーシスト、ビル・ワイマン。当時、ビルはソロ・アルバムを出したり、映画「エメラルド大作戦」('81)を担当していたの。そんなビルに頼んだダリオはサスガよね。

 それから、アンディ・セックス・ギャングが演奏するハード・ロック3曲と、もう1曲を作曲したのは、サイモン・ボズウェル。彼は後に「デモンズ2」('87)、「アクエリアス」('87)、「サンタ・サングレ 聖なる血」('89)の音楽も担当していたの。そして残酷な殺人シーンに使用されるアイアン・メイデンモーターヘッドのパラノイア的なへヴィー・メタル。この頃からダリオはハード・ロックに傾倒していったの。この「フェノミナ」のサウンドトラックは、ピノ・マグリの美しくもオペラチックなスキャットのように「残虐のロック・オペラ」の最初のサウンドトラックとして最高ね!

 

 ゴブリンに関してだけど一般的には「ゾンビ」('78)が最後の傑作と評する人が多いけど、そうかしら?ちょっと待って。「パトリック」('79)の幻想的なサウンド・イリュージョン、「アモ・ノン・アモ」('79)のラブ・サウンド、そして「エイリアン・ドローム」('81)のハイ・テンションも傑作よ!「シャドー」('82)のディスコ・タッチのスリラー・サウンドも死ぬ程いいわよ。

 人には「ゴブリン好き」は秘密にしてるけど、イタリアが生んだゴブリンは忘れられないの。

 CINEVOX…チネヴォックス…しねぼっくす…と真夜中のベッドでささやくとワタシの細くて白い指は、薄くて小さなピンク色のパンティにそっと伸びて秘密の花園に知らず知らず…ってワタシ、変態さんかしら?

 …ジェニファーったらいけない娘…

 
 

 サウンドトラック・アルバムは、LPがイタリアはCINEVOX、フランスはPOLYDOR、アメリカはENIGMA、日本はVICTOR、そしてイギリスはHEAVY METALよりリリースされたの。これらのLPはイタリア以外、収録曲が異なるのが特徴ね。イタリア初盤のみ「フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド」の曲があったりイタリア以外にはゴブリンの「パトリック」の曲が2曲収録があったりするのは、既製のロック・アーティストの契約の関係の為ね。日本盤のみ効果音があったりするのもおもしろいわね。

 イタリアでは、ロープライスの再発盤が出る位ベストセラーを記録したの。そしてCD化も速く、イタリア・日本でリリース。このLPヴァージョンのCDは、今ではコレクターズ・アイテムね。

 

 1997年にはイタリア・CINEVOXよりゴブリンのスコアのみピックアップ、そしてそのゴブリンの曲の別ヴァージョンをプラスしてニュー・エディションのCDがリリースされたの。リリースの経緯も、まるで物語のようね。

 …こんな物語を聞いてくれるのはあなただけかも…

 ジェニファー?あーよーく憶えとるよ。ワシはもう高齢でのう、明日、お迎えが来ても不思議じゃぁないんだがの。ジェニは忘れとらん。そう、ワシはチンパンジーのインゲじゃよ。あの頃はのう、ワシも若くて元気じゃった。人間の年齢で比較したら、あの頃のジェニは14才じゃったから、ワシと同じくらいかのう。それが今ではもうヨボヨボじゃよ。時間は早いのう。

 
 ジェニとの想い出はのう、ワシはよくふざけてジェニの背後から悪戯したことじゃった。じゃがのう、ただの悪戯がのう、あまりにもたわわに実った果実のようなジェニのオチチに我を忘れる時があったのじゃよ。そしてワシは、ジェニが「お願い、インゲ、ヤメて!」と叫んでも、「うおおおお!」と背後からジェニのオチチを揉み倒したのじゃった。あ、ワシはメスじゃよ。でも性別を通り越して、ワシは一匹のアニマルと化してジェニのオチチを攻め立てたのじゃ!頭ん中は「君たち!OH!キーウイ、イヤッ!パパイア、カモン!マンゴっだね!」が鳴り響き、ワシは加速してジェニの秘密の花園に手を伸ばしたとたんに、ジェニにボコボコにされてしもうたのじゃ。
 
↑映画のノヴェライズ本
↑恥ずかしいお歌のレコード
(日本語よ)
 

 ジェニが「テメー、このエロザルが!」と怖い顔になったので「ウキキキ?」と誤魔化したのじゃが、時既に遅しじゃった。それからジェニはワシとは遊ばなくなり、ワシの遊び相手はダリオ・アルジェントになってしもうたのじゃ。ダリオも決して悪い人ではないじゃがのう。いつも「グヘへへ」と笑っていてのう。ワシは怖かったのじゃよ。それにダリオのオチチを揉んでものう、なーんも嬉しくはなかったのじゃよ。それからワシはジェニの写真をずっと、ずーっと、ずーーーーーーーっと、肌身離さず生きてきたのじゃ。「フェノミナ」の前売り券を買ったらもらえたジェニの「下敷き」は宝物じゃった。ほんまに今では、ジェニにはスマン事をしたと思っておる。もし会えたら謝りたいがのう。今、ジェニは何処におるかワシは知らんのじゃ。

↑「フェノミナ」前売り券を買ったら
もらえた下敷き。
 
 この老いぼれのインゲが、お迎えが来る前に、神様が願いを叶えてくれたらのう。冥土の土産に、欲を言えばもう一回、いや、イカン、イカン。チンパンの誇りにかけてワシはジェニのあの笑顔の想い出で充分じゃよ。でもトシのせいでな、ジェニのあの愛くるしい笑顔を、時々忘れてしまうんじゃよ。そんな時は、メロンとゲジゲジを見たらジェニの顔を思い出すんじゃよ。ジェニのオチチはメロン、眉毛はゲジゲジじゃったからのう。こんな連想が出来るのは、やっぱワシは野性に生きるアニマルじゃからなんじゃよ!!