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Goodfellas House Choose One!

ちょっとしたサウンドトラックとその作品についてのコラムです...

AL PACINO SCARFACE

主演 アル・パチーノ
監督 ブライアン・デ・パルマ
脚本   オリヴァー・ストーン
音楽 ジョルジオ・モロダー
Scarface Tony
He loved the American Dream.
With a vengeance.
(彼はアメリカン・ドリームを愛した。復讐と共に。)
1. Push It To The Limit

 1980年、キューバからマイアミに渡った男、アントニオ・モンタナ、通称トニー。深夜スタンドの皿洗いから、表向きは車の販売業、裏はマイアミの暗黒街のボスであるフランク・ロペスの下で働く事となる。
メキメキと実力を発揮するトニーに脅威を抱いたフランクはトニーを消そうとするが、トニーの返り討ちに遭う。不様にも命乞いをするフランクをトニーは亡き者とし、フランクの組織と情婦のエルヴィラをその両手に掴んだ。コカインの密輸で一大帝国を築き、エルヴィラと結婚、豪邸に住み、美容師になるのが夢の最愛の妹ジーナには店をプレゼントと、トニーはマイアミの顔役となっていく。しかし、マイマミの輝く太陽の光とは裏腹にトニーは破滅の道を転げ落ちていく。誰も信用出来なくなり、コカインで孤独を癒すトニー。豪邸を大量の刺客に襲撃され遂にトニーは、マイアミの闇夜に散っていった。

 己のガッツと信用で世界を掴んだトニーだったが、運命に翻弄され、そして復讐される。両手を広げて翼を失った鷲のように散った男、トニー。その姿は太陽に近づきすぎて翼を焼かれた堕落の天使か、オデッセウスか―

2. Girogio Moroder's Soundtrack

 オープニングからシンセサイザーの重い響きが聞こえる。その"Tony's Theme"が全編にアレンジされて流れる。まるでエンニオ・モリコーネの「狼の挽歌」のような暗い情念をもっとへヴィにしたような。
 ジョルジオ・モロダーは、当時、『ミッドナイト・エクスプレス('78)』、『アメリカン・ジゴロ('80)』、『フォクシー・レディ('80)』、『キャット・ピープル('82)』、そして『フラッシュ・ダンス('83)』等で絶好調であり、『スカーフェイス』でキャリアのトップを飾った。本作ではシンセサイザーの重いビートを駆使してチェインソーのシーンを、NYの暗殺シーンでは緊迫感溢れるスコアを聞かせ、クライマックスではアフロ・ビートのハイテンションなスコアを見事に聞かせる。
 "Tony's Theme"をテーマ曲としてもう一つのテーマが、美しく甘い"Gina's & Elvira's Theme"だ。この2曲を軸に舞台となるバビロン・クラブに流れる、きらめくコカインの粉が舞い踊るダンス・ミュージックの数々!

 
 

 モロダー自身がプロデュースし、リリースされたサウンドトラック・アルバムには前記の2曲の他、トニーの絶頂期に流れる"Push it the limit"(歌のポール・エンゲマンとモロダーはその後、『84年・ロス・オリンピック・アルバム』『1990・イタリア・FIFA・ワールド・サッカー』のアルバムでも仕事をしている)、そして"Rush Rush"(『ブロンディ』のデボラ・ハリー)、"Turn of the light"、"'She's on fire"(エイミー・ホーランド。『ナイト・オブ・ザ・コメット('84)』、『ティーン・ウルフ('86)』他のサウンド・トラックに参加)、"Shake it up"&"Dance Dance Dance"(エリザベス・デーリーベス・アンダーソン。この二人はモロダー絡みで『誘惑('84)』に参加。)、"Vamos a Bailar"(『マクベイン('91)』のヴェネズエラの女優、マリア・コンチータ)などのソングナンバーを収録。

 2曲のスコアの演奏はモロダー自身と女性ピアニストのヘレン・セント・ジョン(『フラッシュ・ダンス』)。

 

 リリースされたアナログ盤はアルバム、デボラ・ハリーの12インチ、そしてプロモ・オンリーとして"Push it the limit"の本当のサウンドトラックのフルレングス・ヴァージョン(アルバムはミックス違いのショート。)の12インチ(この曲は当時、麻倉未稀もカヴァー)等。

 CDは数年前にヨーロッパでのみリリースされていたが、2003年、アメリカでリミックスされたCD(正確にはサウンドトラックではない!)と、Def Jamのインスパイア・アルバムがCDと2枚組のLPでリリースされた。

 
 
 公開時、来日していたモロダーはインタビューで「私はこの作品に入れ込んでいる。自信作なんだ!」と言っていた。この『スカーフェイス』でモロダーは、トニーのように頂点を極めた。その後もサウンドトラックにそのメロディを刻み込んだが、未だ『スカーフェイス』を超える作品はない。
She's On Fire... Gina & Elvira

 公開時、アメリカではブロックバスター・ヒットこそしなかったが、興行成績はよかった日本ではヒットせず、4週のみ公開)。しかし、批評は最低だった。アメリカ・プレイボーイ誌ではウサギ・マーク1つのForget it!の評価だった。日本もほぼ同じか、ちょいといい位か。でも婦女子には全くもって人気がない。パチーノでも『ゴッドファーザー』はOKでも『スカーフェイス』はNoの女子。例えばビデオを貸しても「なんか最初の方で目のでっかいにーさんがブーたれてるしさー、何か先行き暗いと思ってデッキを止めてどん兵衛食べて寝た.....」との感想。ほぼオープニングでデッキを止めるとは、その行為は「自分の人生を若くしてリセットする」という愚かで信じ難い行為ではないだろか?違うかい、トニー?

 

 それだからこそ今は、あの、その.......長澤まさみクンと一緒に『スカーフェイス』のDVDを観てえ.....(すまねえ、トニー)そしてまさみクンが「ねえねえ、たっちゃん、聞いて!ワタシ実は『スカーフェイス』が好きなの。DVDも持ってるよ!」と言ってみなはれ!(うおおお!トニー!プッシュ・イット・ザ・リミットおおお!)でもまさみクン、「ねえねえ、トニーって日曜日は何してるんだろ?きっとチワワ連れてマイアミ・ビーチでお散歩してるね。トニーは白いお粉が好きなんだからケーキ屋さん、やればいいのにね!歌えるよ!♪ぷっしゅぅ、ざぁ、りみっとぉ!♪」.......(......トニーはチワワなんか飼わないよ......トラを飼ってんだよ......それにケーキ屋さんなんかもやらないんだよ......モンタナ興業で忙しいんだよ、まさみクン........)

 まさみクンがダメならこの人にあの麗しの声で.......滝川クリステルさんに「せい・へろー・とぅ・まい・りる・ふれんど」と言ってもらいてえ.....(許せ、トニー)(さあ、滝川さん!)(しっとりとした声で)「せい.....へろー.......」(滝川さん!もっと大きな声で!シャウトしてください!) 「....叫ぶのですか?どうも苦手で......ど努力してみます......どっせい!へろー!とぅ!まい!りる!」(滝川さん!もっと流れるように!!) 「......ではニュース・フラッシュです.......」(シカトしないくださいよぅ!)

 まさみクンも滝クリさんもやっぱ、エルヴィラとジーナのようにトニーの事、理解していなかったね......でもマニーとチチが凄い二人を連れてきたぜ!まずは動く凶器杉本彩!が叫ぶ!!「アタシ、『スカーフェイス』が好きなの。トニーに縛られたいの!何か文句ある?」そして大御所・中村玉緒が吼える!!「どわはは!わて『すかーふぇいす』が好きですねん。あの主役の人、名前は何でしたかいな?そう「アル・パチーン!」さんでしたかいな。わてパチンコの方がもっと好きですねん!どわはは!!

♪Rush, Rush to the YEO!! Buzz, Buzz, give me YEO!!!!

4. The World Is Yours

 アル・パチーノは言う。「最も誇りに思う、大好きな作品は『スカーフェイス』だ。」と。それは現在でも変わらない。パチーノと異口同音に監督のデ・パルマ、製作のM.ブレッグマン、脚本のオリバー・ストーンも頷く。
 特にストーンは「誇らしい、我が子のようだ。」と声を荒げる。リアルタイムではマシンガンの銃弾を浴びせられた本作は、1984年のビデオ時代から人気のカルト・ムービーとなり、1999年にはフランスでリヴァイヴァル、そして2003年には堂々とアメリカでデジタル・リマスター版が公開されてさらに評価を上げた。

 日本での公開時、リスペクトしていたのは双葉十三郎氏(素晴らしい批評!)、当時日本を震撼させていた「ハチの一刺し」の榎本三恵子さん、そして北野武氏!北野氏は持ち番組の『TVジョッキー』でオモチャのチェーンソーをラッシャー板前の頭にクラッシュさせて「ある・ぱちーの!すかーふぇぃす!」とシャウトしていた。

 『スカーフェイス』は運命の限界に挑んで破滅した男のヴァイオレンス美学の傑作だ。

 トニーが『あの世』の階段を上る時、あのモロダーのスコアが流れ、『あの世の査問官』がトニーに問う。
「トニー、君は世界が自分の物と思っていたようだが、それは間違いだよ。さあ懺悔して悔い改めなさい。そうしたら天国行きのチケットを与えてもいいよ。」
  トニーは思う。
「何かフロリダのタスク・フォースに居た時の気分だぜ。こいつは誰かに似てる。そう、あの汚職デカのバーンスタインだぜ!」
「さあ、悔い改めなさい。」
トニー、立ち上がって叫ぶ!

 No,Fuck No! The World is Mine!! Say Hello to My Little Friend!!!