ちょっとしたサウンドトラックとその作品についてのコラムです...
―ある日、とある山奥での出来事―
ジャングルのような山奥のキャンプ場に何故か男達が横に一列に並んでいる。その男達は一様に『青白い顔にうつろな目、そしてポッチャリ体型』だ。皆、心ここにあらずといった様子でうつむいている。
そこに一人のおっさんが颯爽と現れた。スラリと伸びた背筋に鋼のような体型だ。鬼瓦のようなマスクにテンガロン・ハット。そしてポッチャリ達に吠え始めた。
「『真の漢(おとこ)養成塾』へようこそ!これから貴様達を訓練する教官のハックマンである!本名は青田赤道だ!」 無言のポッチャリ達。
「貴様らは死んでるのか?…押忍!と言わんか!ボケ!」 「…お、押忍…」 「腹の底から怒鳴らんか!ウジムシども!それでは真の漢にはなれんぞ!一生、オカマで終わる気か!」
青田教官は一人のポッチャリに質問を始めた。
「おい!貴様の下界での愉しみは何だ!」 「え、ええと、アニメとPCであります…」 「貴様、そんな小さな愉しみで生きてて楽しいか?このアカの手先め!自販機でエロ本でも買ってこい!このクソッタレが!」 「お、押忍!」
そして教官は、まるで肉の塊のような少年に罵声を浴び始めた。
「何なんだ!その醜い体は!まるで現代美術のようだ!おい、貴様!『男』を見せろ!」 「は?」 「男を見せろ!と言ってるんだ!何度も言わせるな!低能め!」 「ボ、ボク、オトコですけど」 「何を寝言を言っておる!オトコの証だ!ボケナス!」 と少年をフルチンにさせる教官。 「なんだこりゃ?What Fuck is That?何なんだその貧相な物体は?きびがら棒ぶら下げてよくも男だなどと抜かせたな!このチンカス野郎!俺の妹のパンツでも脱がせて来い!ドアホ!」 「ひぃー!」 と泣き出す少年。教官のシャウトは続く。 「いいか!貴様らがメイド喫茶で萌え萌えしてる間にも戦場は燃えている!そして共産主義も蔓延してしまうんだ!性根を叩き直さんとアカには勝てんぞ!この数日で貴様らをソルジャーにしてやる!まず本物の『漢』の姿を今から観せるフィルムで学べ!形から入るんだ!わかったかクズども!」 「押忍!」
そして上映が始まった…
アトランタのはみ出しデカ・シャーキーは高級売春組織の捜査を始めた!どうやら売春組織を牛耳っているのが大物ヤクザであり、売春婦の客には地元の政治家も居たわけだ!政治をせんと性事に励んでどうする!このクソッタレめが!シャーキーは、売春婦の一人・ドミノに目を付け、張り込み・盗聴を始めた!
案の定、彼女の部屋には政治家から大物ヤクザが出入りしていた!チキショーめが!まるでストーカー・覗き魔のように監視するシャーキー!ちょっとドミノに惚れるシャーキー!何なんだ貴様!弛んどる!根性直しの腕立て100回!の間にドミノの部屋に顔も凄いが腕も凄い殺し屋が襲撃した!貴様らがポッチャリしてるからだ!ドアホ!しかし殺されたのはドミノの友達で、ドミノ自身は助かったのだ!良かった!シャーキーは安全の為、というか惚れてしまったのでドミノをシャーキーの実家に避難させたのだ!このクソッタレめ!
何故かドミノに子供の時、図工で作った椅子を照れながら見せるシャーキー。
「えへへ、これオレが作った。座るトコには好きだった女子の名前が彫ってあるんだ。」
…いいムードじゃないかこのヤロー!ドミノは見事な肢体の豪華・美女だ!豊かな胸の膨らみとスラリとした肢体!そのマスクには降参だ!敵前逃亡するくらいの美女なんだ!シャーキーはドミノを見つめ、「ここには邪魔は入らないと確信」すると「ムハハ」と心の中で高笑いをしたんだ!
そして!いいか!ポッチャリども!ここからが真の漢、オッサンの姿だ!よーく瞬きを惜しんで見やがれ!クソボケども!!
…シャーキーは不敵な笑顔を見せたとたんドミノにブチューッと濃厚な口づけをかました!そして彼女の豊満なオチチをむんずと鷲づかみだ!しかもウドン粉をこねるように揉み倒す!彼は自分勝手に「ドミノの所有するデルタ・三角地帯」を確認したくなり、その行動を急いだわけだ!ドミノの所有するデルタ地方は、すでに「雨期」に入っており、「湿地帯」になっていたわけだな!その田畑も見事に刈り取りも終わってるので、シャーキーは自分の所有する「材木所の樹木」をドミノのデルタ地帯に搬入しようと考えたのだ!搬入は思ったほど困難ではなく、スムーズに事が進んだ!それはドミノとシャーキーの見事な呼吸が、一致したためだ!あんな大きな樹木の搬入は、誰にも出きるもんではない!「えいほ、えいほ」の2人の息がリズミカルに部屋中に響き渡り、二人は「肉体労働」の素晴らしさと醍醐味を体感した!そして「お疲れ!」と2人でビールで乾杯した…
…どうだ!これが漢だ!ポッチャリども!拍手喝采の息をつかせる間もないぞ!ボケ!
というわけでこの売春組織は大物ヤクザが経営、地元の政治家を市長にして市を牛耳るヤクザの陰謀だったのだ!秘密を知ったドミノの口封じに殺し屋が襲ったのだ!分かったかボケども!全てを知ったシャーキーは、大物ヤクザを倒し、ドミノを殺そうとした殺し屋との対決の場に向かったのだ!
シャーキーは殺し屋の顔を見て 「あれ?どこかで会ったような?お前、マルセ太郎?、あ、お前、奥目の八っちゃん!岡八郎やないか!」 「バ、バレたらしかたないな!オレはこう見えても空手八段やぞ!通信教育やけどな!が、がぉおお!」 と持ちネタを披露する殺し屋!そしてシャーキーの怒りの銃弾が、殺し屋の体を蜂の巣にした!お見事!シャーキー!
…ちっとは力が沸いてきただろうがポッチャリども! 「お、押忍!何か股間が熱いっス!」 そうだ!その意気だ!ソルジャーの道は近いぞ!ボケ!次行くぞ! 「押忍!」
ポール・カージー!その名を聞くだけで体に電流が流れる!流れないのか?このボケども!彼はニューヨークで街のダニどもに妻を殺され、娘を廃人にされたが、闇の処刑人としてダニ退治を行ったヒーローなんである!分かったか!ポッチャリども!彼はLAに移住して娘のリハビリの為、安らかな生活をしていたのだが、ここにもダニは繁殖していたのだ!鬼チクショーめが!
そんなある日ダニどもが、ポール不在の時自宅に押し込み家政婦を惨殺した上、家に居た娘を誘拐!オモチャにされた娘は死んでしまった!何て事をしやがる!虫ケラども!お前が悪い!
と側に居たフリーターに往復ビンタをお見舞いする教官!
ポールは目覚めた!L.A.でも狼に変身したのだ!早速、下駄箱から愛用のオートマチックを取り出すと全身にマンダムを塗りたくってダニ退治に出た!襲撃!爆撃だ!うぉぉ!偶然すぎるが、調子よく憎きダニどもを一人、二人とブチ殺すポール!無表情で銃を撃つ!これがソルジャーだ!ボケども!漢は無言の早撃ちだ!夜のベッドでも早撃ちで悪いか!ボケ!ポールも早いんだ!
ポールは昼間は真面目な建築設計士だが、夜は処刑人として生きていた!そんな彼にも恋人が居たんだ!ボケ!最近、ポールの夜の行動の変化に感づく彼女!何て女は鋭いんだ!ウソをすぐ見破りやがって!何でポッケを探る!お前が悪い!
と関係ない大学生のはらわたに鉄拳を炸裂させる教官! 「この微笑みデブが!ドーナツばっかり食いやがって!」 と一人、興奮する教官!
ポールは最後の憎きダニが病院に入院してると知ると医者に化けて進入!そしてダニをブチ殺した!お見事!ポール!でも恋人は、ポールの正体を知ると彼の元を去った!ドアホが!女は何もわかっちゃいない!ボケ!お前が悪い!逃げ回るポッチャリ集団!!
…皆、集まれ!叫べ!俺に続いて叫べ! 「オス!」 よし!バッチグー!気持ちんよか!夜霧のハウスマヌカン!どんとぽっちぃ!プールバー!お二ャン子クラブ!Yeah!漢、サイコー!オッサン、サイコー!!
「シャーキーズ・マシーン」の音楽は、当時「ダーティ・ファイター」('78)、「ブロンコ・ビリー」('80)、「キャノン・ボール」('80))で知られる名音楽プロデューサーのスナッフ・ギャレットが、トップ・ジャズ・ミュージシャンを結集させて凄いサウンドトラックを完成させた。そのメンバーは、ヴォーカルがサラ・ヴォーン、マンハッタン・トランスファー、ジュリー・ロンドン、ペギー・リー、チェット・ベイカー、ランディ・クロフォード他、そして演奏はエディ・ハリスのサックスにシェリー・マンのドラム、ドク・セヴェリンセン、アート・ペッパーのトランペットとまるでジャズ・フェスティヴァルのようだ。
この見事なジャズ・アルバムは、ワーナーからリリースされベストセラーを記録。10年以上も廃盤にならずに愛された名アルバムである。
「ロサンゼルス」は前作の「狼よさらば」('74)がハービー・ハンコックに対して、スーパー・ロック・ギタリストのジミー・ペイジが担当である。当時、ペイジはレッド・ツェッペリンを解散したばかりであり、解散後の初のソロ・アルバムが「ロサンゼルス」の仕事となる。世界中のロック・ファンが、ペイジの初仕事が「ブロンソン映画の音楽」と聞いて、ある意味腰を抜かしたのも事実である。それでもペイジは、立派に映画音楽の仕事をこなし、ファンの期待を裏切る事無く自慢のギター・プレイも聞かせるのだ。
映画音楽としては、オーケストラを起用して愛のテーマも披露してるのだからなかなかのもの。但し、全体的にややチープな雰囲気は、当時の「キャノン・フイルムのブロンソン」だからか。何故ペイジが、この音楽に起用されたかは、監督のマイケル・ウィナーが、まずレッド・ツェッペリンのファンであり、たまたまウィナーのロンドンの自宅の近所にペイジが住んでいたからだ。
エンド・タイトル・テーマのペイジのギター・プレイには、シビレまくりの聞きまくり。アルバムは、ツェッペリン同様、スワン・ソングからリリースされて世界中でベスト・セラーを記録。映画を観ないロック小僧も聞きまくり、当時ショップのロック・コーナーはこの「ブロンソンのジャケット」が埋め尽くした。また、シリーズ第三弾「スーパー・マグナム」('85)でもペイジはクレジットされているがほとんど「ロサンゼルス」の曲を再使用していた。
1980年代、レイノルズとブロンソンを愛する婦女子は存在していたのか?
…そんな奇特な話は知らねえな。
当時、レイノルズはアメリカでは大人気の大スターであり、そして当然ながら女性にもモテモテであった。そのむせかえるような男の魅力と黒い髪・髭の虜だったのだ。そして人懐っこい笑顔も魅力だった。そんな彼は、女性誌の「コスモポリタン」でオール・ヌードを披露し女性に大ウケしたのだ。でも日本では、その濃厚すぎるキャラクターが受けなかった。こんな濃いおっさんに寝室を訪れて欲しいと願うチャレンジャーは日本には皆無に等しかった?
その点、ブロンソンは70年代半ばまでは、わが国でも愛されたスターである。彼のCMのおかげでもあるが、それでもブロンソンのファンの大半は、女性では無く、同姓である。彼の作品は、男性が楽しむアクションのみなのもその原因でもある。ただし「雨の訪問者」('70)は女性にも愛された唯一のブロンソン作品である。
レイノルズとブロンソンの共通点は1980年代半ばから人気が急降下して行く事だ。ブロンソンはキャノン映画でそのB路線を極め、レイノルズは体調を崩してから作品の質も低下、その後信じられない位のB級作品で悪役、脇役に甘んじた事もあった。それでもブロンソンはショーン・ペン監督の「インディアン・ランナー」('91)、レイノルズは「ブギー・ナイツ」('97)で忘れられない名演技を披露した。
しかし、彼らが過去の作品に刻み込んだその「本物の漢の魅力」は、今も生き続けている。それは永遠に消えることは無いだろう。今ではこんな濃厚な漢は存在しないのだから。