1972年に誕生したイギリスの個性的なレーベルVIRGIN。
先のイギリスの老舗レーベルのEMIが、1980年代に入るとアメリカに進出して、EMI AMERCAを発足して好セールスを記録。
それに続けと人気専属アーティストを引っさげて、1987年にVIRGIN AMERCAが誕生。
そんなVIRGINは自社でリリースしたエンニオ・モリコーネの『ミッション』('86)のサウンドトラックの大ヒットにより「映画音楽はいいビジネスになる」と同年、映画音楽専門レーベル・VIRGIN MOVIE MUSICを立ち上げ、モリコーネの『ランページ』('87)、デヴィッド・マンスフィールドの『シシリアン』('87)、エリック・セラの『グレート・ブルー』('88)、マーク・アイシャムの『モダーンズ』('88)、ジョルジュ・ドルリューの『サマーストーリー』('88)、エリック・クラプトンの『ホームボーイ』('89)、ジェームス・ホーナー(追悼…)の『レッド・ブル』('88)等のサウンドトラック・アルバムをリリース。
そして1989年の目玉リリースが、『ブラック・レイン』。
リリースされたアルバムのエグゼクティヴ・アルバム・プロデューサーは、リドリー・スコット自身。
そんなスコット入魂のアルバム(LPの)Aサイドは、クラブ・ミヤコで流れるナンバーを中心としたVIRGINのアーティスト達のイギー・ポップ、UB40、坂本龍一、レ・リタ・ミツコ・アンド・スパークスに加えてSOUL II SOUL。
Bサイドがグレッグ・オールマンの主題歌とハンス・ジマーのスコア・サイド。
ジマーのスコアは全てが収録されていないが、主な曲を巧く組曲で収録。
この時代にありがちな全てがソング・ナンバーでスコア無し!の虚無的な内容では無い。
アルバムのクレジットを見るとスティーヴ、ジェフ、マイク・ポーカロのTOTO・三人衆、ユーッスー・ン・ドゥール、『ブレードランナー』のオーケストラ・ヴァージョン・アルバムに参加していたイアン・アンダーウッドらの名スタジオ・ミュージシャンらがクレジット。
特筆すべきなのは主題歌を歌うグレッグ・オールマン。
彼は1970年代、サザン・ロック、ブルース・ロックの最右翼のオールマン・ブラザース・バンドの名ヴォーカリスト。
1974年の名ソロ・アルバム「ライブ」等があるが、決してチャートにヒット・シングルを毎年リリースするような、誰でも知っているようなコマーシャル・アーティストでは無い。
そんな通好みの実力派のオールマンが歌う「I'LL BE HOLDING ON」は勿論、ジマーの曲であり全編に様々なアレンジで流れるテーマ曲。
この激シブのロッカ・バラードには男泣き、むせび泣いたもの。
心斎橋の立ち飲み屋では「なんや、柳ジョージかいな?」と泥酔客は聞き間違って、さらに酔い「どうせやったら上田正樹に歌わせや。」とさらに焼酎をオーダーする位、どこか日本的であり、浪花節的な響きがするんやがな。
ちなみにアルバム未収曲としてホビー・ダーリンの「BEYOND THE SEA」、『ブレードランナー』にも使用された「OGI NO MATO」等がありまっせ。
2012年に遂にオフィシャル・2CD・SETがLALA-LANDよりリリース。
初めて聴ける主題歌のメイン・タイトル・ヴァージョンや別テイクのスコアも大量に収録されていたが、これも完全盤ではない。
ラスト・シーンの「NICK AND MASA」の本編ヴァージョンや予告編のDEMOヴァージョンが未収であり、これらが収録されていたら完全だったんやけどね。
1989年のSOUNDTRACK ALBUM OF THE YEARの『ブラック・レイン』。
今では松田優作、若山富三郎、安岡力也そして高倉健を忍んで聴くと昨日とは、違った味わいで聴こえてくる。
さらにリアル・タイムからオールマンの唄う「I'LL BE HOLDING ON」は、孤独にむせび泣き、想い出に心を閉ざし、明日が見えないときにヴォリュームを上げて聴きつぶれる真夜中の応援歌となっている上、あの世に旅立った『ブラック・レイン』組の日本の役者達のバラードとして、今夜も聴きつぶれる。