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Goodfellas House Choose One!

ちょっとしたサウンドトラックとその作品についてのコラムです...

Klute: コールガール
監督   ダリオ・アルジェント
主演 ジェシカ・ハーパー
ステファニア・カッシーニ
音楽(作曲・演奏)

ゴブリン

Killing Fields, The

 ワタシ、むかーしむかし、それはそれは大富豪の一人娘の超お嬢様にしてスーパー・アイドル級のカワイサに加えて、世界を羽ばたくバレリーナだったのよ!
 そう…スージー・バニヨンのあの忌まわしくて恐ろしいドイツのバレエ寄宿学校(女だけ)のお話を聞いて下さる?

 
 

 あれはワタシが20代後半、いーえ絶対に19歳の時のこと。
 そのころワタシは大きな瞳に愛らしいカールした髪でさ、モデル級のしなやかな肢体でさ、でもバストは目玉焼きで声がブルース・シンガーみたいなハスキー・ヴォイスがかよわい乙女の悩みでさぁ!
 …って真夜中の友達の長電話はこの辺にして…
 1977年、あの時ワタシは「世界に舞うアイドル・バレリーナになっちゃる!」と決心して単身、ニューヨークからドイツにある名門のバレエ学校に入学する為にドイツの空港に舞い降りたの。
 その時、もう夜の10時でさぁ、凄い土砂降りの雨だったの。
 とにかくタクシーに乗り込み学校に着くと門から「秘密のドアが!アイリスが三つ!青いのを回すのよ!」と女の子が叫びながら飛び出してきたの。
 「あー、こんな雨ん中ビニール傘なしで飛び出したらダメよ。ドイツにもバカ娘は居るのね。ったく!」
 とワタシは余裕ぶっこいてんだけとこれが恐怖の始まりだったの…

 
 

 雨ん中、飛び出したコとその友達はその夜の内に誰かにぶっ殺されていたのをワタシは知らなかったの。
 学校は副理事長のマダム・ブランク、厳格な教師のターナー・オバハン、ピアニストのダニエル以下、下男と下女等、なーんかイヤな感じの人々に加えて、この学校の理事長は海外に旅行中だというの。
 何か変ね!とアイドル頭脳全開のワタシだったけど、ルームメイトのサラと友達になったの。

 
 
 厳しいレッスンの毎日、ワタシは鼻血を出してぶっ倒れ、何かとターナーのイジメにも逢い、トドメは屋根からウジ虫が舞い降りてきて「あー!もう辞めちゃる!」と思っていた時、サラがひっそりとこの学校の秘密を打ち明けてくれたの。
 「理事長は実はこの学校のどこかに潜んでいる、殺されたコから謎めいたメモを託された!」とのことを聞いて二人で秘密を探ろうとした矢先、ピアニストが殺されさらにサラまでもがいなくなった!
 ターナーに問い詰めてもラチがあかないのでサラの友人の学者に相談すると、バレエ学校の古い歴史となんと魔女の話しまで聞かされてワタシは驚いた。
 なんでもこの学校を設立したのは400年間生き続けている魔女だというの!
 
 
 ある夜、ワタシは遂に理事長室に侵入。
 その時、「アイリスが三つ!青いのを回すのよ!」と最初の夜に出遭ったコの言葉を思い出したの。
 壁を見ると、アイリスの飾りが!
 青いのを回すと秘密のドアが開き、そこにはマダム・ブランク、ターナーらが魔女の儀式の宴会の真っ最中やおまへんか!
 それに「スージーをぶっ殺せ!」と物騒なことも叫んじゃってさ!
 「アカン、逃げなアカン!」と別の部屋に逃げ込むとなんとそこにはエレナ・マルコスっちゅう本物の魔女が居た!
 
 
 あの話は本当だった!と声も出ないで震えていると
 「来たね!アメリカ娘が!オメはここで死ぬんだ!」
 魔女の雄叫びの真っ最中、ワタシは側にあったガラスの置物の羽を魔女の首にぶっ刺してやった!
 すると断末魔の叫びと共に学校がガッシャンガッシャンと崩れて行くやおまへんか!
 とにかくワタシは外へ飛び出したの!
 そしたら最初の夜と同じでまーた雨降りでやんの。
 …でも何故かその時、自然と笑みがこぼれていたっけ…
 

 広い額、何日もシャンプーしていないようなのっぺりとした薄い髪寝不足のような暗く沈んだ眼いかにも運動神経が切れているようなひ弱な体
 絶対に女子からは「絶対につきあうのイヤ!」と捨てゼリフを浴びせられる確率200%のイタリア男、ダリオ・アルジェント
 当時で言うなら健康で爽やかなジュリアーノ・ジェンマのようなイタリア男も居るのにアルジェントときたら…
 でもそんなアルジェントの屈折した暗い情念は、恐怖映画の監督としての才能を開花させ、自作のサウンドトラックにも非凡な才能を発揮させていたのであります。

 
 

 当時、巨匠になりつつあるエンニオ・モリコーネ『歓びの毒牙』('69)、『わたしは目撃者』('70)、『4匹の蝿』('71)で組んで時にはモリコーネを激怒もさせたアルジェント。
 とにかく自作の音楽にはうるさく、その要求はもはやスタンリー・キューブリックのよう。
 本気でピンク・フロイドディープ・パープルにも依頼しようとしていたアルジェントは、やはりロック・ジェネレーション。
 そんなアルジェントの運命的なサウンドトラックは、1975年の「PROFOND ROSSO」即ち『サスペリアPART2』
 先に決まっていたジョルジョ・ガスリー二のスコアを大幅にカットし、追加スコアに加えて演奏しなおしたのは、当時スタジオ・ミュージシャンで固められたバンド、チェリー・ファイヴ。
 彼らはゴブリンと改名して担当した『サスペリア PART 2』の大成功でアルジェントの信頼を得たゴブリンが、続く『サスペリア』のサウンドトラックを担当するのは当然のことであります。

 
 

 アルジェントの緻密な音楽設計と構成に応えるべくゴブリンのメンバー、クラウディオ・シモネッティマッシモ・モランテファビオ・ピニャテリアゴスティーノ・マランゴロはスタジオに籠もってアルジェントを感激させる最高のサウンドトラックを完成させるのでした。
 わらべ歌のような愛らしいメロディーのテーマから一転しておどろおどろしい唸り声暗黒の叫び声と断末魔の悲鳴をも思わせる暗黒の響き、そしてパラノイアなロックの洪水で全編をバケツの水をひっくり返したのような音楽の洪水で演出していたのでした。
 ブズーキタブラのようなエキゾチックな楽器も効果を上げていたのはアルジェントのアイデアでもあり、この『サスペリア』ではゴブリンとアルジェントの最高のコラヴォレーションの結晶でもあります。

 まるで冒頭のドイツの空港の豪雨のように全編降り注ぐゴブリンのロック・ミュージック。
 そう『サスペリア』は − ホラー・ロック・オペラ・ショーの饗宴なのです。

 1977年、『サスペリア』のサウンドトラック・アルバムはリリースされました。
 それはただの1枚のサウンドトラック・アルバムでは無く、革命的なアルバムだった!と言えるでしょう。
 ゴブリンの音楽は今まで耳にした事のない、恐ろしくて官能的なロック・ミュージックであり、それは完成度の高いトータル・アルバムだった、と言えます。
 映画のサウンドトラックの枠を遥かに飛び越え、当時マニアが増えてきていたヨーロッパのプログレシッヴ・ロック・ファンにも強烈にアピール。
 ここにイタリアのENTER THE GOBLIN!となったのです。

 

↑イタリアオリジナル盤LP(表)

↑イタリアオリジナル盤LP(裏)
 
 オリジナルのイタリア盤はCINEVOXよりリリース。
 シングル・ジャケットの上部からなんと違うデザインの見開きジャケットが収められており、拡げるとなんとゴブリンのロゴ・マークが飛び出すではありませんか!
 「これは − ばんそうの飛び出す絵本か −」と少年心を刺激してようやくレコードが出てくるという超豪華ジャケットです。
 

↑イタリアオリジナル盤LP内ジャケ(表)

↑イタリアオリジナル盤LP内ジャケ(裏)
 

↑日本盤LP

 日本ではODEONレーベルから異なるジャケットでリリース。
 プロモ盤ではイタリア・オリジナルの豪華スタイルを維持しておりましたが、さすがにコストの関係で一般リリースでは普通の形でありました(初回プレスのみ豪華盤だったの説もあり)。
 フランスはBARCLAY、イギリスではEMIとそれぞれ異なるジャケットでリリースされ、本国イタリアでは大ヒットとなり、日本でも大いにセールスを記録しました。
 シングル・カットもされてアルバム同様にベストセラーとなりました。

 

↑日本盤シングル

↑フランス盤LP
↑イギリス盤LP
 

 イタリアではあまりの売れ行きにCINEVOXも驚き、1980年には新ジャケットで再リリース。  CINEVOXのドル箱としてその威力を発揮したのでした。
 この時、『サスペリア』をメインとしたダリオ・アルジェント集ゴブリン集という様々なコンピレーション・アルバムもリリースされゴブリン・マニアを大いに喜ばせたものです。

 

↑イタリアDAGORED盤LP(2000年)

↑フランス盤ゴブリン作品集
 
↑イタリア再発盤LP
↑イタリア盤D・アルジェント作品集
 

 勿論、CD化も速く、しかも1990年代の後半には完全盤CDも登場、 2000年にはさらなるニュー・ジャケットでDAGOREDよりLPもリリースと「ゴブリンのサスペリア」の旅は永遠に続くのです。
 ここ最近でも紙ジャケットリニューアル盤ピクチャー・ディスク・LPも登場とゴブリンのクラシックとして愛され続けております。

↑完全盤CD
 
 改めてアルバムを聴き直すとAサイドのおどろおどろしさよりも、ゴブリンのスタジオ・ロック・ミュージシャンとしてのテクニックで聴かせる(映画本編では未使用)「BLACK FOREST」「BLIND CONCERT」の2曲に耳を奪われます。
 映画音楽の常識を打ち破り、聴く者全てを歓喜させたゴブリンの『サスペリア』!
 イタリア映画界の革命的・サウンドトラック・アルバムとしてこれからも永遠に、闇夜で鳴り響きます。
 

 ロッキード事件コーチャンピーナッツヨッシャ・田中首相逮捕!激動の1976年が終わり、1977年になるとキャンディーズの3人の太ももよりもピンク・レディーの張りのある太ももにヨダレを垂らしていた頃―
 ブライアン・デ・パルマの『キャリー』に始まり、『家』『オードリー・ローズ』そして『センチネル』と怒涛のごとくに恐怖映画の波に飲まれようとしていた矢先、6月10日「決してひとりではみないで下さい!」の『サスペリア』が公開されました。
 既にこの時、普通の中学生は映画館の常連でもあり、小学生も友達同士で劇場に足を運ぶ時代でしたね。
 そんな低年齢層の好奇心を刺激してかの大ヒット。
 勿論、こわいもの好きの女子高校生、OLらも大挙して悲鳴をあげておりました。
 そんな女子目当ての痴漢オジサンもスポーツ新聞片手に劇場の闇に進入しており、そこはパラダイスだった(by 痴漢オジサン)そうです(なんせ女子はキャー!キャー!と画面に釘付けでありましたから)。

 
 
 『サスペリア』はどうしても「ホラー」としてのジャンルに限定されてしまいますが、こんなにエロティックなテイストが画面から香ってくる映画!?としても記憶されております。
 登場人物のほとんどが少女マンガから飛び出してきたような美少女ばかりで、彼女達の寄宿・バレエ学校で彼女達がバンバンと殺されて行く姿の連続に何故か、エロティックな官能美が感じられます。
 この映画によって立派な「倒錯的 − 変態ちゃん」を大いに生んで刺激した!と言っても過言ではないでしょうか。
 だって監督のダリオ・アルジェントは立派な世界に誇れる変態のマエストロでありますから(美少女を酷い目に遭わせる!というと『フェノミナ』同様、アルジェントの趣味ですね)。

 

 
 主演のジェシカ・ハーパーは撮影時、既に20代後半でありながらスレンダーな肢体と大きな瞳のせいかどことなくあどけなく、ロリータ・ガールのアイドルとして立派に通ります。
 ラスト・シーンの魔女との対決のシーンの時のノーブラ姿の乳首のポッチが、トラウマになったというか忘れられない変態クンは結構、多いと思われます。