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Goodfellas House Choose One!

ちょっとしたサウンドトラックとその作品についてのコラムです...

California Dreaming
主演 グリニス・オコーナー
デニス・クリストファー
監督   ジョン・ハンコック
音楽  

フレッド・カーリン

 
 

 カリフォルニアの夏!
 そこはパーム・ツリー心地いい潮風眩しい太陽ビーチに群がる女子たち!
 これがカリフォルニアのサマー・ビーチ!!

 

 嗚呼、オイラはついにシカゴから憧れのカリフォルニアにやって来たんだ!
 オイラはTTっていうナイス・ボーイ!
 …ただ悩みは色白でヒョロヒョロのモヤシッ子ってこと…
 通販で買ったブルワーカーでボディを鍛えてみたけど全く効果なし!
 でもいいんだい!
 今年の夏は、このビーチで思いっきり性春、おっと青春するんだい!

 
 早速、ビーチに着くと…
 おお!ビキニの女子がいっぱい!
 豊満なオチチにヴィーナスのようなウェストの下は、バミューダ・秘密の三角地帯やおまへんか!!


 下半身が疼くような感激に浸って鼻血を流していると、ひょんなことからこのビーチでショット・バーを経営してるおっちゃん・デュークの家でこの夏を過ごすことになった。
 この家には彼の娘のコーキーというブロンドでムチムチの女の子が居た!
 いやっほぅ!
 思わずガッツ・ポーズのオイラ!…だったけど、ビーチバレーの名手でもある彼女は、田舎者のオイラに「軽蔑の眼差し」という強烈なアタックをお見舞いしたのだった…

 

 ショックに打ちのめされたオイラをデュークは励ましてくれた。
 彼は若い頃は有名なサーファーでオリンピックで水泳の金メダルも取った事があると教えてくれた。
 そんな彼を尊敬するオイラ。
 オイラはヒョロヒョロだけど、一つだけ自慢出来るのは、オイラの兄貴がジャズ・ミュージシャンで、リリースしたレコードがあること。
 オイラがこのビーチに来たもう一つの理由は、ここで兄貴の曲を聞いて夏を越すため。
 だって兄貴は…もう、死んだんだよ…これは兄貴の供養なんだ…

 
 
 ビーチのサーファー達は、はじめはオイラを馬鹿にしてたけど、徐々に心を許してくれた。
 名サーファーのリックからサーフィンを教えてもらえるまでに仲よくなるオイラ。
 オイラやるじゃん!
 ただ、憧れのコーキーだけは相変わらず「この色白!」と冷たい…
 でも「この夏の間に必ず押し倒す!」と心に誓うチェリーなオイラ!
 

 ある夜、サーファー達と映画を観にいった帰り、コーラのカップを持ったオイラにあるステキ女子が声をかけて来た!
 感動に酔うオイラ!
 意識もクラクラで、ふとオイラの手が豊満なオチチに触れると…なんとも言えないステキな感触…♪
 マシュマロのようでシュークリームのようで…
 初めてっす…女子のオチチに触れたのは…
 「生きててよかったよ…兄ちゃん…」
 …そして成り行きで初キッス犬のキッスの味とはちゃうやんけ…
 俄然、「コーキーのオチチも揉み倒しちゃる!」と決意を新たにするオイラなのだった。

 

 毎日、ビーチでコーキーのビーチ・バレー(眩しいビキニ!)を眺め、サーフィンを教わっているうち、オイラはこのビーチにはいくつもの愛の形がある事を発見した。
 修理工のアールとウェイトレス、そしてキザ男の三角関係
 サーファーのリックとクール・ビューティのステファニーの絶望的な愛
 そして離婚したデュークと妻フェイの再び燃える愛の炎
 皆、恋に愛に生きているんだね…

 
 

 というわけで意を決してコーキーに「真珠湾攻撃」のごとく不意をついて襲撃!しかし逆にボコボコにされるオイラだった。

 「…もう、あきまへんがな…」とフテ寝してると…意外にもコーキーが優しい声をかけて来た。
 ホンマ、女心ってのは、天気のように分からんわ…と思いつつも、オイラたちは熱く熱く燃えるシルエットとなったのでした…

 でも、そんな楽しい夏もそろそろ終わりを告げようとしていたのを、毎朝アルギンZ!なオイラは知る由もなかったのです…

 

 ある日、デュークは心臓発作でポックリ逝ってしまった―。
 やりきれない日々を過ごすコーキーとオイラ。
 そして一つの季節の終わりは、悲しい愛の終わりも告げるんです。
 アールやリック、ビーチのみんなにも。
 カリフォルニアには珍しいどしゃ降りの雨の日に、デュークの妻だったフェイはビーチを去っていったんです。
 デュークとの愛の想い出を胸に…
 オイラとコーキーはフェイを見送りながら肩を寄せ合った…

 
 

 …そう、今年の夏はもう終わり。
 新しい季節の始まり。
 オイラは今年の夏、このビーチでちょっぴり、大人の階段を上がったんだ…

 サンサンと輝く眩しい太陽のカリフォルニア・ビーチに相応しい、「元祖・山下達郎」的なサーフ・ミュージックを聞かせるのは、60〜70年代に色々な佳作を、そして80年代はテレビ・ムービーで活躍したフレッド・カーリン。現在、このカーリンの名前を口に出せるのはよほどのマニアですよ。年齢は完全に40代より上ですよ。カーリンは才能を巧く活かした作品に恵まれず、消え去ったとオイラは思うんです(2004年没)。巧くサーフ・ボードに乗り切れず、波に乗れなかったオイラと同じなんです…

 

 カーリンは若い頃、ジャズ・シーンで活躍後に作曲家・アレンジャーとなり、初の映画スコア『下り階段をのぼれ』('67)で映画シーンにデビュー。サウンドトラック・アルバムもリリースされ好評を得て『合併結婚』('68)、『くちづけ』('69)、『受胎の契約』('70)を担当。まるでジミー・ウェッブバート・バカラックのようなサウンドで人気を集めたんだな、これが!そして『ふたりの誓い』('71)、『さらば青春の日』('71)、『ウエストワールド』('73)と活躍したんだけど…この辺りがピークだったのかも。そう、オイラの身長が止まったのと同じように。

 

 その後は『大襲来!吸血こうもり』('74)、『ザ・テイク わいろ』('74)、『未来世界』('77)、『未来元年・破壊都市』('79)とB級街道を大驀進。1976年には『夢のサーフシティ』『ふたりのカリフォルニア』といったいい作品があったんだけどね…。1980年、『ラヴィング・カップル』で久々にメロディ・メイカーとしての傑作をリリースして復活…!かと思いきやその後はTVMばかりでさらに低迷…。嘆きのオイラには『フィービー・ケイツのトライアングル・ラブ』('83)、『レディ・スカーフェイス』('88)なんてのが嬉しかったけどね。

 
 2000年代に入ってから『レッド・ムーン』('69)、『未来世界』などのスコアがCDとして初リリースされたけど、あくまでコアなマニア向けのリリースでした。オイラは今でもコーキーの豊満なオチチを忘れてないけど、世間一般では『カリフォルニア・ドリーミング』は完全に忘れ去られているんですよ!

 カーリンはこの作品でビーチに流れるサーフ・ソング6曲を自ら作詞・作曲して、ソング・ライターの魅力でカリフォルニア・ビーチ・サウンドをヴィヴィッドに聞かせているんです!そしてオイラ(TT)のテーマとしてジャジーなトランペットがリードする、やるせないメロディの『ブラザー(兄貴)のテーマ』ではカーリンのルーツであるジャズの永遠に忘れられない名曲を聴かせてくれます。1970年代の夏、最後の傑作を聞かせてくれたカーリンは、永遠にオイラの心に記憶されました。コーキーとの想い出と共にね…

 夏が来れば思い出す…
 八十八夜?違う!
 金チョーとスイカの夏?違う!
 干してあった女子のビキニを失敬した夏…?これも違う!(なぜバレた!)
 夏はコーキーのユサユサ揺れるオチチと『カリフォルニア・ドリーミング』のサウンドトラック・アルバム!と決まってるんですよ!(オイラだけね!)

 

 映画の製作会社のレーベル、アメリカン・インターナショナル・レーベル(『悪魔の棲む家』(ラロ・シフリン)('79)」よりリリースされたこの11曲入りのアルバム(販売元及びアメリカ以外はカサブランカ・レーベル)。まずタイトル・ナンバー『カリフォルニア・ドリーミング(夢みるカリフォルニア)』は、ママス&パパスの60年代の大ヒット・ナンバー。この曲のカヴァーで幕を開けるんです。このカヴァーを歌うのは1971年にアルバム・デビューしたバンド、アメリカ。77年まで9枚のアルバムを出していました。オリジナルよりシャープでタイトなヴァージョンです。映画では、オイラ(TT)が観るサーフィン映画のBGMとして流れます。そしてサーフ・ソングを歌うのは、元ゲス・フーのヴォーカリストであるバートン・カミングス、ポップ・デュオのフロー&エディ、どこかから来て去っていった無名のシンガー・ヘンリー・スモールパット・ハンプトンFDRなど。そして元ママス&パパス!で女優のミッシェル・フィリップス(娘はチャイナ・フィリップス)。

 

 サーフ・ミュージックというと60年代からビーチ・ボーイズジャン&ディーンなどが有名ですが、このフレッド・カーリンが書いたこれらのサーフ・ミュージックは、アップ・テンポあり、やるせないバラードありでまるでカクテル・サワーのようなテイスト。当時のAOR(古っ)のようですね。だって参加ミュージシャンにTOTOのジェフ・ポーカロが居てるしね。そしてスコアの『ブラザーズ・テーマ』のジャジーな余韻は夕焼けのビーチのイメージね。

 

 映画のサウンドトラックは数あれどこんな「サマータイム」なアルバムは意外と少ないもの。夏の間はガンガン売れても、その後は…そうなんですよ、このアルバム、まさにひと夏であっという間に廃盤になっちゃって、未だにCD化もされていないんです。

 CD化を望むのはおかしいですか?
 永遠に夏が来ればこのアルバムを聞いているオイラは変人ですか?
 聞きながらコーキーのビーチを駆け巡るビキニ姿を思い浮かべているオイラは変態ですか?

 
 …いいんです、夏が来れば、センタンのアイスとこのアルバムと決まっているんです。
 ヨボヨボのジジイになっても、夏が来ればこのアルバムを取り出して聞くんです。
 そして瞼を閉じるとあのビーチとコーキーとカラフルなビキニの女子達が、脳裏に条件反射的に浮かぶんです…
 青春だったんです…

 夏休み明けの始業式にエロ本を持って来るのは、どこのどいつだ!
 オイラです!
 夏休みの美術の宿題は、「春画」です!

 

 『カリフォルニア・ドリーミング』は「夢みるカリフォルニア」。
 そして夏休み明け。
 皆、何を夢見てこの長いホットな夏休みを過ごしたんだい?
 しかし不思議と休み前と明けでクラスの憧れの女子の様子が…違う…何かが違う…。

 そう、髪がクルクルのパーマだ!
 化粧が濃い!
 ルージュのリップが違う!(ガッコで化粧だ!)
 ブラウスの脇から見えるブラの色が「純白」から「ベージュ」になっている!
 ついでにオチチの「体積」が増しているぞ!
 そしてあのコは、何故か「体育」(たいくじゃないぞ。たいいくだぞ)の時間はずっと見学になった!!

 

 …一体、夏休みに何があった?
 …オイラは夏休み中、毎日テレビのアニメを観て、夕方にはラーメンを食ってはコーラ飲み放題の貴族生活を満喫していたのに。
 たまに駅で見かけたあのコ、ミニ・スカート姿で何処へ行っていたのだ?
 …そして何か、表情も大人のようだ。
 休み時間にはあんなに笑ってたのに、夏休み以降は笑わなくなった。
 スカートの中を下敷きで仰ぐのも止めた…
 さては「ボディ・スナッチャー」されて「エイリアン」になってしまったのか…?
 夏休みは女子を変身させる何かがあるらしい…

 

 でも…オイラは休み前のあのコがいい。
 「Just the Way You Are(素顔のままで)」を流しながら強く思った。
 「最新の流行の服なんて着ないで。髪の色も変えないで。だって素顔のままの君が好きだから…」というビリー・ジョエルの歌声をあのコに聞かせてやりたいと願ったオイラの気持ち…
 夏が過ぎ、体を包み込む熱気が心地よい秋風に変わった頃、卒業したあのコは直ぐ結婚して子供をバンバン生んだという風の噂を聞いた…
 これもちっぽけな青春のかけら…

 

 夏が過ぎるとこの『カリフォルニア・ドリーミング』と共に思い出してしまうやないの、あのコを…
 紙パックジュースをストローで飲むあのコを…
 メロンパンをちぎって食べるあのコを…

 あのコの消しゴムを盗んだのはこのオイラです。
 あのコの自転車のサドルを引っこ抜いて持って帰ったのも…オイラです。