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Goodfellas House Choose One!

ちょっとしたサウンドトラックとその作品についてのコラムです...

トランス 愛の晩餐
主演 クローディア・ウーディ
監督   セルジュ・ベルゴン
テーマ曲 フランソワ・ヴァレリー
音楽 アラン・ワイズニア
ウォーゾーン 虐殺報道
主演 タウニー・キティン
監督 ジュスト・ジャカン
音楽 ピエール・バシュレ

 彼女の名前はジョイ
 パリのトップ・ファッション・モデルなのです!
 華々しい世界でパリ中の女子、男子の憧れの的な女の子。
 でも彼女は幼い頃、両親の真夜中の体育祭を目撃してしまい、さらにパパの顔を直視してしまったために立派なファーザー・コンプレックスになってしまいました。

 
 

 男に対する思いは変わって育ったジョイ。
 華やかなモデルでも心は空洞なのです。
 そんなジョイの前に現れた中年の建築家マルク
 あっという間にマルクの中年おやぢパワー炸裂・世界変態万国博覧会の虜になるジョイ。
 パリ中のあらゆる場所で天神祭り、だんじり祭りを繰り広げるジョイとマルク。
 でも朝になると何故か空しさが―。
 ジョイにも少しずつ女の意識が芽生えていくのです。

 

 

 ジョイはモデルの仕事が増え、ニューヨークへ向かいます。
 心機一転でようやく同世代の男子にときめき始めた時、中年マルクからの手紙が。

 「パリに帰っておいで―」

 
 一度は別れたマルクに揺れ動く乙女心。
 結局、マルクの元へ帰ったジョイですが、ようやく自分と見つめあう時が来ました。
 父との和解こそが過去の自分との決別の時。
 そしてマルクとの完全な別離こそが、女としての新たな旅立ちの時でありました。

 

 彼女の名前はグエンドリン
 彼女はパリの修道院を脱走してとある東洋の街に辿り着きました。
 彼女は幻の黄金の蝶を追うあまり行方不明になった学者のパパを探しに来た冒険好きな女の子。
 でも早速、悪漢どもに香港に売り飛ばされようとした時、謎の男ウィラードに救われました。

 
 ウィラードは日頃、女の子のパンツの中身にしか興味を示さないアウトローでしたが、グエンドリンの桃尻の虜になってパパ探しの冒険に同行する事となりました。
 道中、怪しい部族に攻撃・拉致されたり、ウィラードはこっそりとグエンドリンの唇を奪って彼女に逆襲されたりのゆかいな珍道中の結果、ようやく阿片窟のジジイから秘密を聞き出したのです。
 
 

 ジジイによると彼女のパパは黄金の蝶を発見した為、殺されたとのこと。
 その憎き犯人は女だけのアマゾネス集団を率いる女王なのでした。
 ビビるウィラードとグエンドリンは女王の居るアマゾネス軍団の洞窟を奇襲!
 彼女はウィラードのパンツをいきなりズリ下ろし、そのご立派なイチモツを露出させるという奇策でアマゾネス軍団の気が緩んだ瞬間に女王と対決し、勝利したのでした。

 
 憎きパパの仇を倒し、パパの形見の黄金の蝶を手にしたグエンドリンにウィラードが叫びました。

 「おい!これでオマエの桃尻を拝ませろや!」

 『ジョイ』の音楽は、まず甘くけだるい印象的なテーマ曲をフランソワ・ヴァレリーが作曲。
 このテーマを巧みにアレンジして全体のスコアを担当したのはアラン・ワイズニア
 ヴァレリーは当時、フランスでは若手ポップス・シンガーにして作曲家でした。
 代表作としては1982年にソフィー・マルソーに曲を提供したり、ソフィーとデュエットした曲が『夢見るソフィー』として日本でもヒットしました。

 

 ヴァレリーのこのテーマ曲はデビー・デービスが歌いとても耳に残ります。
 この作品でヒットを飛ばしたヴァレリーは、一躍フランス映画音楽のプリンスとしてその後、『デンファー 地獄の追跡者』('84)、『ジョイ』の続編『愛の迷宮 MISSジョイ&ジョアンの冒険』『Les Nanas』('85)などを担当。
 そしてファッショナブルなジョイのライフを華麗に彩るワイズニアのスコアは、時にブラックなダンス・ミュージック、妖しいサックスのジャジーな響きを聴かせてジョイの世界をさらに華麗に染め上げています。
 様々な夜の運動会シーンにヴァレリーのテーマを甘いストリングス、あるいは妖しい腰つきにフィットしたリズムで我々を昇天に導いてくれます。

 
 
 サウンドトラック・アルバムは、フランスではメジャー・レーベルのWEAよりリリース。
 日本では完全ジャケット違いにてEAST WORLDよりリリースされました。
 日本ではシングル・カットもされましたが、バブル時代のOL姉ちゃんの応援歌とはなりませんでした

 …なぜかしら…?

 

 続いて『ゴールド・パピヨン』ですが、シンセサイザーのエスニックな東洋風のスコアが最高!なスコアを担当したのは監督ジュスト・ジャカンのスケベ友達ピエール・バシュレ
 このコンビは『エマニエル夫人』('73)からのコンビで今回も再タッグを組んでおりますが、以前とは違うアプローチで我々の耳を奪いました。
 作品の舞台が某東洋という舞台設定もあり、その東洋フレーバーがとてもメイド・イン・フランスとは思えません

 
 恐らく1983年に、フランスでは坂本龍一の『戦場のメリークリスマス』のエキゾチックなシンセサイザーが大ヒットしたこともあり、この『ゴールド・パピヨン』も同様にそんな東洋的なシンセサイザーでサウンドトラックを彩ったのかもしれません。
 とにかくスケールの大きいアレンジと大胆なオペラチックなコーラスも取り入れたこのスコア。
 でも甘いギターの音色にバシュレらしい『エマニエル夫人』的なフレーズを聴くとニヤリとなるのは何故でしょうか。
 

 サウンドトラック・アルバムはフランス、ドイツなどで名門RCAレーベルよりリリースされました。
 ドイツではジャケットが異なりマニア心スケベ心の両方を刺激してくれます。
 でも日本ではリリースがありませんでした。

 …なんで…?

 
 時は流れて2010年現在、この2作品がCD化されたニュースなんて耳には入って来ません。
 恐らくこの先もないでしょう。
 今でもこの2枚のサウンドトラック・アルバムを所有している者は、恥ずかしいのでしょうか?
 人にあまり言えないのでしょうか?
 今でも時々、聴いているのはおかしいのでしょうか?

 …なぜだか軽く罪悪感…

 フランス映画の『ジョイ』と『ゴールド・パピヨン』が、日本で公開されたのは共に1984年でした。
 当時アイドル人気全盛時代の日本では、この2作品の主演女優達も一部のファンにとって短期間ながら人気アイドルとなりました。
 『ジョイ』のクローディア・ウーディは1960年生まれですから当時24歳
 『ゴールド・パピヨン』のタウニー・キティンは1961年生まれの当時23歳
 今は2010年ですから彼女達は…あまり考えたくありません…

 
 

 人間誰しも男女を問わず歳を重ねると若さを取り戻したくなり、若く見られたい、そうありたいと願います。
 でも時間は無情にも若さを奪って行きます。
 ある日突然、あの時代が遠い過去となります。
 何十年も前の芸能人達の今の姿を見て「あー、老けた!昔と全く違う!」と笑っている自分の容姿は身勝手にも忘れがちになります。
 いい例として『ジョイ』『ゴールド・パピヨン』の公開時の1984年にちょっと時計を戻してみましょうか。

 

 当時のAさんは19歳の男子
 大学のクラスに憧れの女子が居たそうです。
 彼女は皆のアイドル的な存在で小柄なボディに豊かな胸と肢体というベストプロポーションに、男なら誰でも夢中になったそうです。
 大きな瞳とテレ笑いのぺロっと出す舌もまた、彼女のキュートさを倍増させていたそうです。
 Aさんはただ彼女を見つめるだけで幸せでしたが、卒業前に告白したそうです。
 結果は苦い想い出となったそうですが、お互いに卒業、そして就職と、その後も顔を合わすことなく時が過ぎました。
 その間も当時のヒット・ソングを聴いたりすると淡い想い出が蘇り、彼女の顔がぼんやりと脳裏に蘇ったりしていたそうです。

 
 

 そして最近、Aさんの耳に風の噂で、彼女が結婚して今どこそこに住んでいる、という話が届いたそうです。
 その場所が、Aさんが学生時代にバイトしていた所とそう遠くもなく、何か懐かしさのあまり、その場所に行きたくなったそうです。
 もしかしたら今の彼女に出遭えるかも…とそんなプチ変態チックな想いを抱いて駅に向かったそうです。

 

 懐かしさのあまりに我を忘れて商店街を歩いていた夕暮れ時、前から豹柄のド派手な服に包まれた紫色のパンチ・パーマのオバハンが…
 …どことなく顔に見覚えが…
 …でもそんな大福のような顔の知り合いは…

 その直後でした。
 そのオバハンはケータイ電話で

 「え゛ー、あたしぃー、○○子!これから甲子園に阪神の応援にいくねんよ!」

 と叫んだそうです…

 …あ…
 …彼女だ…

 

 結局、Aさんは逃げるようにその場を立ち去りましたが、身勝手にも自分自身は1984年のままでした。
 自分だってあの当時とは違うはずなのに。
 人間、誰でも時と共に変化します。
 当時のアイドルでもそうです。

 …今の自分を受け入れなくてはいけません…